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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)71号 判決 1948年6月10日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人山田丈夫同林千衞上告趣意第二點について。

證人については、被告人側から申請のあった者を総て調べなければならぬという譯のものでなく、事案との關係の親疎、遠近、重要性の有無及び程度その他諸般の事情を考慮して、事実審が適度に取捨選擇をすることができる。辯護人の申請した證人加藤行雄は、既に第一審公判において訊問れておるから再度取調の必要を認めなかったものであろうし、又他の二名についても事案に直接關係薄きものとして訊問の必要を認めず却下したものであろう。前記加藤行雄については、辯護人の證人申請を却下しながら、同人に對する第一審第二回公判調書中の供述記載を證據として採用している點において、刑訴應急措置法第十二條に違反する疑をいだく者があるかも知れない。しかしながら、同條に「証人の供述を録取した書類」という中には、公判における證人の供述を録取した公判調書は、含まれないものと解すべきである。なぜならば、かかる證人の供述は、公正な公判廷において被告人の訊問する機會が當時既に與えられたからである。論旨は、結局原審の裁量權に屬する証拠の取捨を非難するものであるから、上告適法の理由とはなし難い。(その他の判決理由は省略する。)

よって、刑訴第四六六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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